AIで「指示の先」へ行くために
求人文章づくりの事例から考える、次世代のAI活用思考法。AIに答えを作らせるのではなく、戦略を考えさせる指示力について解説します。
―求人文章づくりの事例から考える、次世代のAI活用思考法―
近年、生成AIを取り巻く環境は急速に変化し、私たちの仕事における AI の存在感はますます大きくなっています。 ただし、ここで一つ大切なことがあります。
**「AIは使うこと自体には価値がない」**ということです。
多くの人は、AIに指示を出し、結果を受け取る——その一連の流れを"AI活用"だと捉えています。しかし私は普段から、企業や士業の方々に向けてこう提案しています。
「AIに"ただ答えを作らせる"のではなく、AIを使って"次に何をすべきか"を考えられるようになっていただきたい」
言い換えると、AIを「便利な道具」で止めるのではなく、「成果を最大化するための知的拡張パートナー」として扱う視点が必要なのです。
この記事では、実際にあった転職エージェント向け求人文章の改善相談を例に、「AIに指示を出す、その先」に進むための思考法を分かりやすく解説します。
AI活用の本質は「入力の質」にある
AIを使う人の多くが誤解していることがあります。それは、AIの性能がアウトプットの質を決めていると信じてしまうことです。
実際は逆で、アウトプットの質は"入力の質"でほぼ決まります。どんなに優れたAIを使っても、質問が曖昧であれば曖昧な答えしか返ってきません。
求人文章を「ただ作らせる」のは、AIの力の1割しか使えていない
あるクライアントから、こんな相談をいただきました。「転職エージェント各社に掲載する求人文章を、AIで作りたい」。一見するとよくある依頼です。多くの人はここで、「では求人広告の文章を生成しますね」となるでしょう。しかし私は、こう考えました。
目的="どこへ行きたいか"を考え直す
車の例え話をしてみます。東京から大阪まで移動するとします。軽自動車でも、大型バスでも、乗用車でも移動は可能です。しかし、車を選ぶ前にまず考えるべきことがあります。荷物を1トン運びたいのか、30人を運びたいのか、とにかく快適に移動したいのか。これらの「目的」によって、使うべき車はまるで違います。
同じように、AIに文章を作らせる場合も、「何を達成したいのか」「誰に届けたいのか」「どの媒体で効果を出したいのか」という目的設計が必要なのです。
媒体ごとに"刺さる文章"は違う
転職エージェント各社には、それぞれ特徴があります。20代・第二新卒の流入が強く成長環境や未経験歓迎が刺さる媒体もあれば、ビジネス経験者や幅広い年代に向けて待遇の詳細や職場環境の明確さが重視される媒体、企業文化や社内の雰囲気に価値を感じる層が多い媒体、他社優位性が重要になる媒体もあります。
つまり、同じ求人内容でも、各媒体ごとに"書くべきポイント"が変わります。ここを理解せずに「求人文を作って」とAIに頼んでも、最大の効果は得られません。
本当にAIに頼むべきは「文章」ではなく"戦略"だ
私がクライアントに提案したのは、文章生成そのものではありません。まずAIに「この媒体で効果を最大化する求人文章の要点を教えてください」と質問します。すると、この媒体特有の訴求ポイント、読者層、重視されるワードなどが整理されます。
次に「この企業の強みが、読者にどう響くか分析して」「同業他社との差別化ポイントを抽出して」「応募者を増やすための構成案を3案つくって」と問いを重ねます。
このように"文章生成より前の、戦略の部分"をAIに担わせるのです。すると、媒体ごとの最適な構成・見出し案・差別化案・キャッチコピー案など、骨格が圧倒的に強い求人文が作れるようになります。
最終的な文章だけAIに作らせるのは、もったいなさすぎる
AIに最終稿だけを作らせるのは、「大阪に荷物を届けたいのに、とりあえず車を選んで出発する」ようなものです。
重要なのは、目的(どんな人材を獲得したいのか)、読者層(媒体別の傾向)、差別化ポイント、応募を後押しする心理導線、ペルソナごとの響く表現——これらを"AIを使って考えること"です。そうすることで、AIの力を何倍にも引き出せるようになります。
ここからAIは"質問力の時代"に入る
AIの能力は年々向上しますが、「質問力」と「目的設計力」だけは、人間にしかできない領域です。AIは、こちらが投げた問いの「枠組み」からは出ません。だからこそ、多くの人が気づいていない次のステップがあります。AIに"答え"ではなく、"考えるための材料"を出させることです。これこそが、次世代の仕事人に求められるAI活用の本質だと考えています。
最後に:今日からできる3つのアクション
- AIに結果を作らせる前に、「目的」を必ず言語化する
- 媒体・ユーザー属性ごとに"刺さる要素"をAIに分析させる
- 「文章作って」ではなく「戦略を考えて」と投げかける
これだけで、AI活用は大きく変わります。「ただ便利に使う」段階を抜け出し、「成果のためにAIと一緒に考える」ステージへ進むことで、仕事は間違いなく進化します。